5月9日

<道路掃除夫のベッポじいさんの言葉から>
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「なあ、モモ」と、ベッポはたとえばこんなふうにはじめます。
「とっても長い道路をうけもつことがあるんだ。おそろしくて、
これじゃとてもやりきれない。こう思ってしまう。」
「そこで、せかせかと働きだす。どんどんスピードを上げていく。
ときどき目をあげて見るんだが、いつ見てものこりの道路は
ちーともへっていない。だからもっとすごいいきおいで働きまくる。
心配でたまらないんだ。そしてしまいには息がきれて動けなくなってしまう。
道路はまだ残っているのにな。こういうやり方はいかんのだ。」
「一度に道路ぜんぶのことを考えてはいかん。
わかるかな?つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸のことだけ、
つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。」
「するとたのしくなってくる。これがだいじなんだ。
たのしければ仕事がうまくはかどる。
こういうふうにやらなきゃあだめなんだ。」
「ひょっと気がついた時には、一歩一歩すすんできた道路がぜんぶおわっとる。
どうやってやりとげたかはじぶんでもわからんし、息もきれてない。」
「これがだいじなんだ。」
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ミヒャエル・エンデ/「モモ」より