10月30日

愛の蕎麦屋
「山忠」の閉店を知りました。
最後に行った時は、
娘さんしかいなかったので、
ちょっと心配だったんです。
あったかな所だったなぁ…

十蘭堂をやっていた頃の日記を探したら
山忠の思い出が書いてあった。
長いので、時間有る時にでもどうぞ。




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●愛の蕎麦屋 

先日 とっても素敵な
蕎麦屋さんがあるよと教えてもらった。
愛に溢れた店だということで
一昨日期待して行ってみたら
予想以上の愛の嵐に大満足。
薄野のバッティングセンターのスラッガーズの東横
第7グリーンビルの1階にある「山忠」という
手打ちの立ち食い蕎麦屋さんである。
午後6時開店のようで早く行き過ぎて店の前で待つ。
店内はカウンターのみでお父さんと
二十歳過ぎの娘の2人でやっているとこのこと。
暖簾を出しに娘が出て来る。
オーバーオールにキャップを後ろ向きに被っている。
水森亜土スタイルである。
この店はイイ!!
何故かもう その時点で嬉しくなる。
狭い店内には娘が描いたと思われる素朴な水彩画や
お父さんの作品らしき筆書きの一言が
あちらこちらに貼られている。
賑やかで一見とても明るいのだが、
作品達をよく見ると絵は”夜の街灯”だったり
愛の一言は”もう泣かない”とか何だか全部 少し暗い。
メニューは600円までで、半分位は”だまし”とか
”スタミナ パート1”とかどんな蕎麦なのかさっぱり解らない。
(ちなみにスタミナはパート3まであった)
店主の超個性的な脳内宇宙が
内装にまで漏れ出てしまっているのは
不器用な位 まじめに仕事に取り組んでいる証拠。
こういう店は絶対美味しいものを出すに決まっている。
飲食店というのは結局 店主の誠実さが一番重要だと思う。

わからないメニューの説明をいちいち聞きたかったが
あまりに多いので諦めてスタミナパート1を注文する。
親子だけあって手際良い2人の連携プレーにより
すぐに出てきた蕎麦にまたビビる。
大きめの器に蕎麦がテンコ盛り
さらに天ぷらやら鶏肉やら海苔やらで
東京のラーメン店「二郎」のように
具が高く盛り上がっている。
「食べれないかも、、、」
最近 痩せはしないのだが、
歳の為かめっきり食が細くなっているのだ。
大盛りを頼んだわけでもないのに
このメガトンクラスの盛り、
サービス満点で嬉しいが
後で辛い思いをするのは確実。
鈍感な私でもさすがに最近やっと学習して
無茶な盛りは極力避けるようにしている。
一口食べてみると旨い。
汁は甘過ぎず蕎麦も手打ちだけあって
喉越しがとても良い。
これで600円とは凄いことだ。
しかし量が問題である。
麺は軽く2〜3玉分はあるし具も何やら沢山である。
でも初めて来た店でとっても美味しいと思ったのに
食 べ 残 し て 帰 る な ん て 〜!!
おまけにカウンターのみなので目の前には
お父さんと娘がこちらを見てニコニコしている。
もう途中からは気が遠くなりながら完食。
汗だくのまま「また来ま〜す」とやっと言って店を出た。
愛というのは温かみであるが時には暴力のようでもある。
山忠、、、
正に愛の蕎麦屋。



● 続 愛の蕎麦屋

昨日は愛の蕎麦屋「山忠」に再び行ってきた。
たしか6時開店だったので丁度に着くようにしたのだが
店は既に満員だったので15分ほど外で待った。
通常の立ち食い蕎麦屋さんだと平均5分位で食べ終わって
人は回転してゆくがここは量が量なだけに
お客さんの店に居る時間が当然長いようである。
ドア越しに絶えず話し声や笑い声が聞こえてきて
飲み屋でもないのにとっても明るい空気が外にまで伝わって来る。
ドアのガラスから中を覗くと娘さんは前回と同じ
キャップの斜め被り&オーバーオールの
水森亜土スタイルだったので
60年代生まれとしては何だかまた嬉しくなる。
何を食べようか考える。
前回はスタミナパート1を食べたので
今日は何だか解らないけどス
タミナのパート2でいこうと心に決める。
冷えきった体でやっと店に入ると
お父さんと娘が満天の笑顔で迎えてくれた。
そしてすぐ「あなたの紹介でもう
5〜6人お客さんが来てくれたよ〜」
と言われ照れる。
恥ずかしいので すかさず決めてあった
スタミナのパート2を注文。
今回のスタミナはどんなスタミナなんだろう?
どうやら私は”スタミナ”という言葉にめっぽう弱いらしい。
考えてみれば”スタミナなんちゃら”というメニューがあれば
必ずソレを注文してしまう。
悲しい男の性である。

スタミナパート2は相変わらずのテンコ盛りの蕎麦に
生卵、山芋、鶏肉、海苔がゴバッとトッピングされていて
スタミナが必要以上についてしまいそう。
ズズッと1口食べる。
旨い!!!
山芋が効いていてパート1よりずっとさっぱりしていて
するする食べれられるぞ!!
これなら前回より楽に食べられそうだ!!
しかし旨い蕎麦だなぁ。
これで600円なんて凄いことだ〜。
一生懸命 食べているとお父さんが色々話しかけてくる。

「おにーさん 陶芸家でしょ?」
「いえ」

「書道家でしょ?」
「いえ」

「画家?」
「ただの飲み屋です」

自分のことを話すのが苦手なのでちょっと辛かったが
私に興味しんしんのようで質問攻めにあう。

「昭和倶楽部とかそんな名前の店でしょう?」
「まあ そうです」(おっ 近い!!)

「当然カラオケは無いでしょう?」
「はい」(鋭い!!)

「音楽はどんなのかけてるの?」
「暗いやつです」(何ていったらいいんだ、、、)

「ジャズ?」
「マイナーな音楽が好きなんです」(何ていったらいいんだ、、、)

「ハウスだ!!」
「ハウスはかけませんね」(ハウス知ってるんだ、、、)

「それじゃどんなの?」
「あまり売れてない音楽です」(なんちゅー答えだ〜)

ご飯ものであれば割と話はしやすいのだが
テンコ盛りの蕎麦を懸命に食べている最中は喋るのが大変。
しかし ふと横を見ると
紙にでっかく

「あなたと話がしたい」

と正直に書いてあった。

山忠、、、、、、、 
それは愛の蕎麦屋。




●続々 愛の蕎麦屋

噂の蕎麦屋「山忠」に行こうと夕方
小川直人氏から電話が来る。
数日前からそろそろ愛の蕎麦が
食べたいなと思ってたので丁度よかった。
カヨさんを誘って開店時間丁度の六時にGO!
出遅れると極寒の表で並ばなくてはいけないからな。
夏ならまだしも現在の札幌は
いつでもマイナス越えなので本気でやばい。
私はスタミナのパート3 カヨさんはパート2
直人氏はパート1の大盛り。
それぞれ何が出て来るかは良く解らない。
一番高いものでも600円止まりという
とんでもない安さなので適当に頼むと言う冒険も楽しい。
しかし 通常でも誰もがたまげるとんでもない量なのに
大盛りを頼むとはおやじさんもびっくりしただろう。
いかにも大食いの巨漢の男を
じろりと観たおやじの目がキラリと光る。
その挑戦受けてたちましょうとばかりに
おやじは無言でうなずいた。
カウンターだけの店なのでお互いの状態は丸見えだ。
これはほとんど男と男のタイマン勝負である。
どちらも譲ることの出来ない真剣な戦いだ。
おやじと娘さんが慣れた手つきで山芋を摺ったりしながら
手早くパート1から3までのスタミナ蕎麦を作り始める。

山忠の蕎麦は他の店とちがって
一人前ごとに小分けはしていない。
超巨大な一玉の手打ち蕎麦の塊から
適当(?)におやじの気分で
どんぶりにわけてゆくという
ダイナミックな手法をとっている。
最初に私とカヨさんの分が
ゴバッと蕎麦玉からとりわけられる。
この時点で圧倒的な量に今更ながらビビる。
通常のどんぶりより一回り大きな
どんぶりに、もさっとてんこ盛り。
普通なら3玉分は軽くあるだろう。
こんなに麺を盛ったら具やスープは
どこに入るのだと言う感じだ。
次は注目の小川直人氏の番である。
おやじさんは両手をつかいワサワサと蕎麦を持ち上げる。
サッカーボールのような巨大な蕎麦玉が
目の前30センチの所に出現した。
凄い量だ!これはもう人の食べる量ではない!
これは馬の食事だ!!
これは豚の食事だ!!
後ろの棚からヒョイと出してきた
通常の大どんぶりよりさらに大きい
まるで洗面器のような器に山盛りの蕎麦が盛られる。
今、四人家族が三食かけて食べる位の蕎麦が
一人の人間の為に盛られている。
これぞおやじの熱烈な愛。
テンコ盛りになったおやじの熱い愛の塊だ。

大盛りの店というのはタイプが2つある。
それなりの値段は取るが店主のチャレンジ精神によって
成り立っている、ちょっとおちゃめな店。
もう1つは採算度外視で自分の作った美味しいものを
心ゆくまで食べてもらおうとする聖職者のような店。
山忠は当然 後者の聖人タイプである。
恐らくおやじに儲けるという気持ちは全く無いと思う。
ただ自分の体が持つ限り旨い蕎麦を
沢山お客さんに食べてもらいたいのだ。
いつもは頻繁に話かけてくるおやじも今日は無口である。
黙って小川直人の食いっぷりに注目している。
直人氏はまずエベレストのように
盛り上がった揚げ玉と海苔を
大きな手で上からそっと潰してゆく。
あっ!!これはメガマックの食べ方だ!!!
蕎麦にハンバーガーの食べ方を導入するとは
さすが大食い魔人。
ぶしぶしと潰された具の山が麺ツユに沈んでゆく。
山になっていた部分の3分の1程を沈没させると
洗面器を持ち上げた魔人はおもむろに麺をすすり出した。
ズルズルと音をたてながら蕎麦がみるみる飲み込まれて行く。
食べているというより吸い込まれていくという方が近い感じだ。

バキュームだ!!
バキュームカーだ!!
直ちゃんがバキュームカーになった!!

自分の食事も忘れバキュームマンこと小川直人氏の食事を見守る。
このペースでいくと5分後には軽く完食だな。

ちらりとカヨさんを見ると苦しそうな顔をしながら蕎麦と戦っている。
私も負けてはいられない。昔ほどではないがまだまだ頑張ることはできるぞ。
歳はとっても大食い精神は衰えて無いぜよ!!

今、3人の戦士がおやじの愛を受け入れる為に戦っている。
みるみる過剰な愛はそれぞれの胃の中へと溶けて行き
おやじと私達は1つになってゆく。

少し気が遠くなってくる、、、。
ぼーっとしてきたがあともう少しだ、、、。

ふと横の壁に筆で大きく何かが書いてあることに気付く。

あれ、、、、こないだ来た時はこんな紙 張って無かったはずだ、、、。

胃に血液が全部行ってしまった為かぼんやりした意識でそれを読む。

”できることなら空を飛べたらいいネ”

?????????????????

山忠、、、
それは愛と幻想の蕎麦屋。
蕎麦トリップという新しい夢を与えてくれる店。




●続々々 愛の蕎麦屋   

昨日また小川直人氏の誘いで
愛の蕎麦屋「山忠」に行ってしまった。
前日の疲れからか朝から胃の調子が悪くて
ほとんど食事を採っていない状態だったが
運命と思って諦めてチャレンジすることに。
私だけが苦しむのはなんだから
道連れにカヨさんを呼んで薄野へGO!

開店時間の6時に5分ほど遅れて到着すると
もうすでにお客さんが数人来ていて私達で満席になった。
席に着くとおやじが何故か無表情で
私の顔をじっと見つめている。
やむをえず私も負けずにじっと見つめる。
店に入った途端いきなり
黙って見つめ合う2人の中年男性。

不思議な静寂の時間が数秒流れる。
一体 何が起こってるのだろう?
全く訳が解らない。
急におやじがニコッと笑った。

にらめっこだった。

おやじの横の壁には紙が貼ってあって
“顔は自分の物、表情は他人の物”
という新しい格言が筆で書かれていた。

おやじ 、、、 今日は変に機嫌がいい、、。

嬉しい反面 どこか怖がっている自分がいた。

私はスタミナのパート1、カヨさんは月見
直人氏はパート1の当然 大盛りを注文。
遂に勝負の始まりだ。少し緊張してくる。
前回は無口だったおやじだが昨日は妙に滑舌だった。
日曜にラルズで私を発見した話。
面白そうだから声を掛けずにしばらく真後ろについて
追跡してみたという話(追跡しないでください!)
こんなに機嫌の良い日は初めてだ。
これが悪い方にいかないことを心の中で願う。

まず超巨大などんぶりに蕎麦をどばっと盛りつける。
相変わらず馬の食事並みのとんでもない量である。
これは多分小川氏の分だな、、。
次に通常の大どんぶりにまた ごばっと蕎麦。
これは私の分だな、、。
そして最後にもう1つのどんぶりに蕎麦を盛ったのだが
その量が妙に多い。
ほとんど大盛りと変わらない。
麺がどんぶりよりはるかに盛り上がって
タワー状になっている。
まさか、、、、。
これが私の分であったら大変なことである。
先に来ていたお客さんが大盛りを頼んでいて
おやじはそれを作っているのだと自分に言い聞かせる。

洗面器のような巨大どんぶりに
エベレストのように具を積み上げて
スタミナパート1の大盛り蕎麦がまず完成。
おやじは小川氏の前にソレをどーんと置いて
腕を組んで一言 「似合うな〜」
巨漢の小川氏に超巨大な蕎麦。
たしかに良く似合っている。
おやじはちょっとした芸術家だ。
次にカヨさんの所にドンと月見蕎麦。
そして私の所には、、、、

やっぱりアノ蕎麦が来た〜
いつもより明らかに多い。
絶対に食えない。
食ったら間違いなく大変なことになる。
下手をすると病院行きかも。
動揺を隠せない私をおやじは無視して
何事も無かったように
他のお客さんの蕎麦を作り始めた。

サービスのつもりだ、、、
何気ないサービスのつもりだ、、、

おやじからしてみれば
何気ないサービスかも知れないが
当人の私は生死がかかった大事件である。
一応 男なのでがむしゃらに
食べてみたが全然減る様子が無い。
半分位まで食べた所で少し休んでたら
おもむろに麺つゆを足された。

逃げられない、、、。
私はここで死ぬのか、、。
冷や汗がポタポタ出て来る。
ちょっぴり泣きたい気分。

いや 私が助かる方法は1つだけある。
おやじが他のお客さんに気を取られている一瞬の隙に
残った大量の麺を小川氏のどんぶりにワープさせるのだ。
彼ならこれぐらいの量 朝飯前のはず。

おやじはカウンターを挟んで私の目の前にいる。
あまりに近すぎてなかなか隙が見つからない。
食べているふりをしながらおやじの一挙一動に注目する。
久しぶりに真剣に物事に取り組んでいる自分。
なんたって命がけである。
おやじが他のお客さんに蕎麦を渡すその瞬間
私はどんぶりを素早く小川氏の洗面器の真横に移動させ
少し伸びて量がふりだしにもどり気味の蕎麦の塊を投げ入れた。

ナンにも気にせず黙々と食べ続ける小川氏。

成功だ!!
おやじは気付いていない!!
なんとか死は免れたがもう私はフラフラ。
一滴のツユも飲むことができない。

速攻会計を済まして外に逃げるように出た。
生きて山忠から出てこれた喜びに
普段は辛い外の寒さが妙に心地よかった。

私は勝負に負けたが試合には勝った。
ズルはしたが男のメンツはなんとか守れた。

山忠、、、、
それは愛の蕎麦屋

愛とは時に暴力のようであり
命さえも奪いかねない。
プロフィール

koiso

Author:koiso
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