10月7日




1週間程、入院してました。
物心ついてから初めてなので、
日記をつけてました。





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●入院日記 /前夜
昨日 目が覚めると右のほっぺたが腫れていた。
カヨさんにも言ってなかったが、
七月の始め、シャワーを浴びている時、
突然 右眼が見えなくなってしまったのだ。
これは前日、飴屋さんと平山君と、
新しいマッドマックスをみて大変興奮したので、
脳の一部が故障しちゃったかなと自己診断。
まぁ左があるからいいやとほおっておいたのだけど、
顔がはれるなんて遂に脳出血かもなと、
しぶしぶ近所の眼科に行ってみる。
急に倒れて死んじゃって驚かせたら悪いから。
運のいいことに腫れは虫歯だったのだけど、
眼は深刻なようで、すぐに市立病院に行かされ、
このまま入院、明日には手術で、
十日以上は拘束されるとのこと。
医者に怒られそうで、つい見えなくなったのは、
先週のことだと嘘をつく。
どうせ三ヶ月も放っておいたんだから、
急いだって変わらんし、もう死ぬ心配は無いので、
頼みこんで、入院を一日伸ばして貰う。
夜、何にも知らないカヨさんに事情を話すと
当然驚かれ、猛烈に寂しがられる。
そういえば、十二年程暮しているが、
個人外泊は二泊を一度した位なので、
前例の無いぶっちぎりの離れ離れが待っている。
出会ってから一度も台所に近づかせなかった
彼女に炊飯器やエスプレッソメーカーの使い方や、
冷蔵庫の中にあるものを伝える。
幼い娘を置いて、長く家を空ける母親の気分。
大きなバッグに本やスケッチブック、
ポータブルDVDプレイヤーなんかを
詰めているといよいよ旅行気分になるが、
旅行というより監獄に入る方に近いか。
朝、ご飯を多めに炊き、タッパに詰めて冷蔵。
あまちゃんの再放送をボンヤリ観ながら朝食。
次に二人での食事はいつになるやら。
顔の腫れなんかでビビって、
病院に行ったことを後悔。
以前も白内障をほおっておいて三年程、
完全な片目だったけど不便を感じたのは、
3Dの映画が飛びださなかったこと位。
この歳まで生きるのは想定外だったので、
個人的な災難は自業自得と諦め、
できるだけ素直に受け入れたいと思ってる。
それにしても十二日の留萌での
上映会とライブまでに出れるのか?
医者は難しいと言うので困った。



●入院日記 /一日目
昨夜は消灯の九時半と同時に寝付き、
今朝は起床時間の六時に自然に目が覚めた。
ほとんど普段の生活サイクルと同じなので
睡眠に関してはストレス無し。
午前中は、個展の為の人形を考えたり、
DVDで65年に公開されたアニメ、
「ガリバーの宇宙旅行」を鑑賞したり。
もう何度も観ているのに、
あちこちの場面で妙に感動してしまい、
泣きまくって、目を真っ赤にしてしまう。
手術前なのに何をやってるんだと反省しながらも、
たとえ目は一つでも、ちゃんと心が動くんだから
治らなくても全く困ることはないなと改めて思う。
洗面所で自分の顔を眺めると、
見えない眼がロンパっててカッコイイ。
元々、前歯も無いし、
不気味具合が自分らしくて好きだから、
このままで行こうと決めてたのに、
今日でお別れだったら少し寂しい。
そういや前も、白内障を三年も治療しなかったのは、
白くなってしまった眼球が大のお気に入りだったからだった。
改めて自分の能天気さに感心。
どんなことも何となく他人事に感じる。
流石に両眼が失明してしまうのは
カヨさんに迷惑がかかるので避けたいが、
片目なら何処までも個人の問題。
これから手術。
面白いことあればいいな。



●入院日記 /二日目 
手術は随分大変だったようで、
3時間近くもかかってしまい、
主治医に申し訳なく思う。
可愛い看護士さんに頂いた、
不安が無くなる薬というのが
とっても効いてくれて妙に
ワクワクしてしまい愉快だった。
正しい使い方なんだろうけど、
ちょっと驚いた。
修理内容は、以前白内障の
手術の際に入れた人工のレンズが
眼の奥に落っこちてしまい、
動き回って視神経を壊し、
緑内障を引き起こしたらしく、
まず行方不明のレンズを探し、
新品に交換してから、
治療の為の切開や洗浄をするとのこと。
なんでも眼圧が通常の三倍以上もあり、
頭痛や吐き気も無く
過ごしていたことが不思議だそう。
眼玉の修理は二度目だし、
死ななければ全然OKなので、
始終リラックスして楽しめた。
なんたって、ボンヤリとだけど
イロイロなことが、
ものすごく近くで見える。
局部麻酔が効いているのだけど、
何をやっているのかは大体解った。
刺したり、斬ったり、グリグリしたり、
ぬぐったり、すくったり、注入したり。
途中、何かを剥がした感覚の後、
急に真っ暗闇になり、
暫くして光が突然戻った時は、
生命の誕生のようで感動。
リアルすぎる三時間の
スプラッター映画を観ながら、
仕事とはいえ不真面目な男のパーツを
真剣に修理してくれているお医者さんに
始終感謝してた。
術後に「良い経験になりました」と伝えると、
「喜んで貰えて嬉しいです」と主治医が返してくれた。
手術の終了時刻が大幅に延長になった為、
夕方、私がいるはずの病室に入ったカヨさん、
誰も居ない綺麗なベッドに迎えられるという
あまりにベタな展開に肝を潰したそう。



●入院日記 /三日目 
一日安静にしているようにとの指示で、
しぶしぶベッドの上で過ごす。
眼帯を外して、手術した眼を鏡でみると、
ウサギみたいに真っ赤っ赤で面白いので、
カヨさんにも見ることを勧めたが逃げられた。
まだボンヤリとしか見えないけど、
上手くいけば徐々に視力が戻るらしい。
主治医に、個展が十二月にあるので、
早く家に帰って、毛皮を使った
大きな人形を作りたいと訴えるも、
作業は二週間はできませんよと釘を刺される。
医者は始終冷静だったが、
突然、毛皮を使った大きな人形と言われて、
人はどんなモノを想像するのだろうか?
明日まで本も映像も禁止とのことだったので、
youtubeで十代の頃によく聴いた
洋楽アルバムを探して懐メロ大会。
そういうのが聴きたくなるのは
大抵弱ってる時。



●入院日記 /四日目 
デイルームまでは出ることが許可されたので、
ひたすら、カヨさんと地味な遊びをしてた。
五目並べ、うろ覚え絵描き対決、怪物くらべ、
小学生以来の 鉛筆でやる陣地取り戦争など。
DVD鑑賞は1958年の「白蛇伝」
日本初の長編アニメというだけあり、
気合いの入った素晴らしい映像。
何と言っても、ナレーションから
全ての出演者の声までを、
森繁久弥と宮城まりこの
二人だけでこなしているのがイイ。
自分の為だけにやってくれているような、
ライブ感のある不思議な柔らかさ。
理想のアニメ—ション。



●入院日記 /五日目 
隣のベッドのおじさんの
容態があまり良くなくて、
憂鬱な気分になってしまい、
DVDで70年代のイギリスのコメディ番組
「フォルティ・タワーズ」を鑑賞。
気分は上がったが、あまりに面白くて
閉めきったカーテンの中で、
何度も吹き出してしまう。
イヤホンをしてるから、
具合の悪い方が居る静かな部屋に、
突然、私の笑いが響いてしまった。
入院とコメディーは相性の悪い組み合わせだ。
昼間、別件で飴屋さんから電話を貰い、
黙っているのもなんだから、
入院していることを話したら、
夕方、面会に来てくれた。
病気という自覚が無いので、
嬉しかったけど、照れ臭かった。
帰りがけに、せっかく入院したんだから
使う予定は無くても、映像素材として、
深夜の廊下なんかを撮っておくことを
アドバイスされる。



●入院日記 /六日目 
不具合があるのは
直径3センチほどの球だけで、
後の99パーセントは普通に
機能しているという状態で、
自由が奪われるというのは、
只監禁されてるみたいなもんじゃないか…
なんて、不満を書いてる時に担当医の回診。
このまま視力が戻らなくても、
いつまでも真っ赤な眼でも、
とにかく家に帰りたい!!と強く訴えると、
ちゃんと安静にできるなら、
明日退院してもいいですよと言われ、
予定より数日も早くなった開放に
大いにはしゃぐ。
こんなに嬉しいなんて。
とにかく普段の生活に戻りたい。
隣の調子悪そうなおじさんさようなら。
斜めの学生さんさようなら。
向かいのワガママなおじさんも、
優しい看護士さんもさようなら。
小磯は野生に還ります。



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